予約が消滅
「予約したはずの宿が見当たらず、連絡も無視されて焦るばかりでした」。神奈川県平塚市のウェブライター藤沢篤さん(36)は2022年秋、東欧への旅行中にトラブルに見舞われた。
さらにトラブルは続いた。ジョージアとトルコでは記載された住所に宿泊先がなく、サイトにメッセージを送っても応答はなかった。藤沢さんは「安さで選んだが、複数のサイトを見比べ、過去の評価を確認すべきだった」と振り返る。
トラブル倍増
国民生活センターによると、旅行のネット予約を巡る相談件数は、コロナ禍中の21年度は2309件だったが、22年度に4499件へ倍増。23年度も4382件と高止まりし、コロナ禍前の水準に戻った。
多くは返金を巡るトラブルで、予約直後でもキャンセルができなかったり、入金後にサイト側と連絡が取れなくなったりした事例が増えている。今年4月に相談した関東地方の20歳代女性は「キャンセル料無料」と記載されたサイトで予約したにもかかわらず、実際にキャンセルすると、航空券代の約8万円が戻って来なかったという。
特に目立つのは、海外企業が運営するサイトでのトラブルだ。予約後の対応が英語に限られ、メールやチャットによる回答も定型文が繰り返されるといった相談が相次ぐ。また、海外に拠点を置く企業は旅行業法の対象外となるため、取引条件の説明義務や書面の交付義務といった国内のサイトに課される消費者保護の規定も適用されない。
確認徹底を
その一方で、同センターは「規約をきちんと読んでいれば、防げた被害は相当数ある」と分析する。相談の中には、「キャンセル不可能」などの契約条件や「表示の正確性は保証しない」といった責任を回避する文言を見落としていたケースが多いという。
担当者は対策として、〈1〉航空機と宿泊施設は別の契約と捉え、それぞれで規約を確認〈2〉送信前に入力内容を精査し、疑問点は問い合わせる〈3〉メールやメッセージの画像は全て保存――を挙げ、「困ったら消費者ホットライン(188番)へすぐ連絡を」と呼びかける。
旅行大手JTBは、今夏(7月15日~8月31日)の海外旅行者数を175万人と推計。コロナ禍だった20年の5万人、21年の9万人と比べ、激増する見通しだ。
消費者問題に詳しい染谷隆明弁護士は「旅行サイトでの契約は通信販売になるため、クーリングオフの対象にならない。口コミなどでサイトの評価を必ず確認し、不安があれば、航空会社やホテルの公式サイトから直接予約するのも一つの手段だ」と指摘している。
アメリカ渡航申請の代行サイト注意
米国への入国に必要な電子渡航認証「ESTA=エスタ」を巡っては、公式サイトを模倣した「申請代行サイト」によるトラブルが増加中だ。
米国がテロ防止などの目的で入国前に義務づけているESTAは、取得しなければ入国に加え、航空機への搭乗も拒否される。公式サイトなら21ドル(約3300円)で申請できるが、代行サイトでは手数料名目で数倍の費用が請求される。
代行サイトは検索結果の上位に表示され、日本語の説明に不審な点もみられない。国民生活センターによると、相談件数は2021年4月以降で約1600件に上っており、大半が公式と勘違いしたケースという。
ほかの国の渡航認証でも同様のトラブルがあり、同センターは「公式サイトは『.gov』(米国)、『.ca』(カナダ)などドメインが各国専用の表示になる。申請は大使館のサイトから行ってほしい」としている。