「組織の闇は深い」「うみを出し切って」―。特定秘密の不適切運用や潜水手当の水増し請求、パワハラなど相次ぐ不祥事を巡り、防衛省が海上自衛隊の幹部らを一斉に処分した12日、拠点の呉基地がある広島県呉市では元隊員や市民から怒りや不満の声が噴出した。
【画像】海自でセクハラ被害を受けた女性が自宅に保管していた当時の制服
不正な潜水手当は、呉基地を母港とする潜水艦救難艦「ちはや」のダイバーも受け取っていた。特定秘密の不適切運用での大量処分は、呉基地が母港の護衛艦「いなづま」で適性評価を経ていない隊員に特定秘密を扱わせたのが端緒となった。
県内に住む元幹部の男性は「過去にも不祥事への反省から組織改革に取り組んだのだが…」と無念さをにじませた。その上で「組織の闇は深く、自浄作用がないに等しい。このままでは自衛隊を志望する人がいなくなる」と恥じた。
家族が海自に勤務する同市の40代女性は「潜水手当の不正受給は、手当てありきの給与体系が原因かも。待遇の改善が必要ではないか」と話した。同市で会社を営む木川雅之さん(72)は「国防を担う自衛隊は大切。任務を果たすために襟を正すべきだ」と注文した。
今回の処分では内局の「背広組」によるパワハラも対象となった。呉基地でもハラスメントによる処分が後を絶たない。元隊員の男性は「パワハラが再生産される職場。加害者が処分されず、組織ぐるみで隠蔽(いんぺい)する体質がある」と断じた。
海自では潜水艦の乗組員に川崎重工業が金品などを提供していた問題も発覚。特別防衛監察の実施が決まっている。取引のある企業の幹部は「呉では海自はみんなの関心事。しっかり調べて、うみを出し切ってほしい」と求めた。