食品ロス 削減の取り組み加速させよう(2024年7月13日『読売新聞』-「社説」)

 まだ食べられるのに捨てられる大量の「食品ロス」は食料自給率の低い日本の大きな課題だ。経済的な損失も大きい。削減に向けた取り組みを、さらに加速させる必要がある。
 2022年度の食品ロスは472万トンで、00年度の数値から半減させるという政府目標を8年前倒しで達成した。内訳は、食品製造業や外食産業などから出る事業系が236万トン、家庭から出る食べ残しなども236万トンだった。
 食品製造業では近年、製造工程の見直しなどで、加工食品の賞味期限を延ばす取り組みが広がっている。製造から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎると納品できない、という食品業界の商慣行を改める動きも進んでいる。
 こうした対策により、事業系の食品ロスは57%も減少した。
 スーパーやコンビニなどで、販売期限の近い食品を商品棚の手前に置き、消費者に早めに買ってもらう「てまえどり」が浸透してきたことも功を奏したのだろう。
 ただ、コロナ禍の収束で訪日外国人客数が急回復しており、レストランなどがにぎわって、食べ残しが増える懸念もある。提供する料理に、量の少ないメニューを加えるなど、食べ残しを減らすための工夫を凝らしたい。
 小売店では賞味期限の近い商品を値引きしたり、出荷できなかった規格外の野菜などを学校給食で活用したりすることも大切だ。
 今後の課題は、45%の減少にとどまった家庭系の食品ロスをいかに減らしていくかである。
 豆腐や納豆などを一度に買いすぎて、賞味期限内に食べきれず、捨ててしまう消費者が少なくないという。料理の作りすぎによる残飯の廃棄も目立つ。日常生活の中で、「作りすぎない」「買いすぎない」という意識を高めたい。
 当面の目標を達成したとはいえ、なお多くの食品ロスが発生している。総額は4兆円に上り、国民1人当たりだと3万2000円を超す計算だ。政府主導で真剣に取り組むことが欠かせない。
 メーカーなどの「食品寄付」も定着させたい。政府は、家庭で十分な食事を取れない子供を支援する「こども食堂」や食品事業者などによる協議の場を作った。
 18年に約2300か所だったこども食堂は、23年には9000か所を超えた。ただ、寄付される食品は欧米に比べて少ない。
 食中毒が起きた時の責任問題への懸念が強いためだ。事業者が安心して食品を寄付できるような仕組みづくりを急ぎたい。