東京高等検察庁の黒川元検事長について法律の解釈を変更し定年を延長した閣議決定をめぐり、大学教授が経緯を検証できる文書の開示を国に求めた裁判で、大阪地方裁判所が「法解釈の変更は黒川氏の定年延長を目的としたものだ」などとして一部の文書の開示を命じた判決は国が控訴せず、確定しました。
この定年延長をめぐり、神戸学院大学の上脇博之教授が経緯を正確に検証できる公文書を開示するよう国に求めた裁判で、先月27日、大阪地方裁判所は「法解釈の変更は、元検事長の定年延長を目的としたものと考えるほかない」などと指摘し、元検事長の定年延長について法務省内で協議や検討した文書の開示を命じました。
これについて、控訴の期限だった11日までに国側は控訴せず、判決が確定しました。
上脇教授は、今回とは別の開示請求で「勤務延長制度の検察官への適用について」という法解釈の変更が書かれた文書がすでに開示されていたことから、この文書を含めて黒川元検事長の定年延長を目的とした文書が作成されていたはずだと主張していました。
判決の確定を受けて、国側が今後、どのような文書を開示するか注目されます。
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開示求めた文書とは
東京高等検察庁の黒川元検事長について定年延長した閣議決定をめぐり、2020年4月、上脇教授が「定年延長を検察官に適用したことに関して閣議決定の前と後に法務省で作成した文書」を開示するよう請求したところ、「勤務延長制度の検察官への適用について」という表題の文書が開示されました。
文書には「検察官にも国家公務員法の定年制度を前提とする勤務延長制度の適用があると解される」などと定年延長について法解釈を変更することが示されていました。
上脇教授は、法解釈の変更が黒川元検事長の定年を延長するために行われたものかどうかを明らかにするため、2021年9月に、「黒川検察官を勤務延長することについて、法務省内で協議、検討した文書」として再び請求すると、法務省は「開示請求された行政文書は作成または取得しておらず、保有していない」として不開示としました。
上脇教授は、最初の請求で開示された文書を踏まえて、黒川元検事長の定年延長を目的とした文書は作成されているはずだとして、おととし1月に不開示の取り消しを求める訴えを起こしました。
裁判では、こうした文書が、黒川元検事長という特定の検察官の定年を延長させるために作成されたのかどうかが争われました。
国は「法解釈の変更を示す文書は存在するが、黒川元検事長の定年延長のために作成したものではない」などと主張しました。
これに対し、上脇教授は「解釈の変更により定年延長が適用されたのは黒川元検事長のみで、当時の法務省の辻裕教事務次官が人事院総裁と面談するなどして強引に解釈の変更を行った」などと主張していました。
証人として出廷した辻元事務次官は法解釈の変更について「黒川氏の定年延長を目的としたものではない」と証言しました。
そして、先月の判決で大阪地方裁判所は「法解釈の変更は、元検事長の定年退官に間に合うように短期間で進められたと考えるほかなく、全国の検察庁に周知されなかったことなど、合理的に考えれば、元検事長の定年延長を目的としたものと考えるほかない」などと指摘しました。
そのうえで上脇教授の最初の請求で開示された文書について「『黒川検事長の定年延長を目的として行われた、法解釈の変更に関する文書』にあたる」などと判断しました。