40年前に始まった新語・流行語大賞の第1回大賞は…(2024年7月10日『毎日新聞』-「余録」)

キャプチャ
青酸混入菓子が発見され、スーパーの菓子売り場を巡回して警戒する警察官=大阪市内で1984年10月15日、今井俊夫撮影
キャプチャ2
KADOKAWA」の本社ビル=東京都千代田区で2024年7月5日午前11時8分、井川加菜美撮影
 
 40年前に始まった新語・流行語大賞の第1回大賞はNHKの朝ドラブームを表す「オシンドローム」。特別賞の「千円パック」は全国を騒がせたグリコ・森永事件の被害企業が発売した完全封印の詰め合わせ商品だった
▲「劇場犯罪」と呼ばれた事件は情報化社会を先取りする犯罪者からの発信が特徴だった。「かい人21面相」を名乗り、企業トップを誘拐。毒入り菓子をばらまくと脅して「身代金」奪取を狙った
キャプチャ
▲「けいさつのあほどもえ」「せいさんソーダ入れた」。大阪弁の挑戦状を報道機関に送り、自己顕示に使った。ネットやSNSが存在していればもちろん利用したろう。ランサムウエアにも手を出したかもしれない
▲企業のネットワークに侵入してデータを使えなくする身代金要求型のコンピューターウイルス。ロシア系ハッカー集団のサイバー攻撃を受けた出版大手KADOKAWAにかつての食品各社が重なる
▲当時、社会不安をあおる手口に脅迫された企業の業績が悪化し、株価が下がった。今回も運営する学園の個人情報などが脅迫の材料に使われ、システム障害で一部のサービスが停止を余儀なくされている
▲「グリ森」は未解決に終わったが、企業の存亡にも関わるような国際犯罪を野放しにはできない。自衛とともに国際協力で封じ込めたい。40年前は被害企業を助けようと「千円パック」が飛ぶように売れた。現在はダークウェブと呼ばれる闇サイトに流される個人情報などを拡散させないことが支援につながる。