海外旅行を楽しむ
みなさん、こんにちは。大垣京佳です。この前、東京・浅草に行ってきました。海外からの観光客が多く、新型コロナウイルスが流行する前の日常に戻ったように感じました。日本の文化を楽しむ観光客を見て、私もまた、海外旅行に行きたくなりました。「耳が聞こえないのに、海外でどうやって会話するの?」と、よく聞かれますが、私の場合、コミュニケーションは日本と同じような方法でとります。今回は、私が1人で海外に行ったときのお話をしようと思います。
知っている英単語と絵で
大学生のとき、アイスランドに1人で行きました。「ゴールデンサークル」を見たかったからです。ゴールデンサークルとは、シンクべトリル国立公園、ゲイシールの間欠泉、グトルフォスの滝と三つの自然スポットを結ぶルートです。時間があれば、スマートフォンでゴールデンサークルの写真を見ていたのですが、見ているだけでは我慢できなくなり、アルバイト代をはたいて行きました。
日本からアイスランドまでの直行便はないので、まずはデンマークに行く必要があります。そこで、飛行機で隣同士になった外国人のお客さんに声をかけられました。飛行中はインターネットを使えないため、翻訳アプリが使えず、少し困りました。
まず、私は耳が聞こえないということを、補聴器を見せて伝えました。ノートとペンは持っていたので、次の会話からは、知っている英単語をつなげたり、絵を描いたりして伝えました。相手は子どもラグビーの先生で、私はニュージーランドの先住民マオリの舞踊で、試合前に選手たちが踊る「ハカ」が好きなことを英語でノートに書きました。しかし、「Haka」と書くところを「Haca」と書いてしまい、一瞬、相手は考えるような表情をしました。けれどすぐに、手で腕をトントンと軽くたたき、ハカをまねるような身ぶりをしました。私は「伝わった!」とうれしくなりました。
伝えようとする気持ちが大切
旅行中、私はスマホの翻訳アプリや筆談、ジェスチャーを使って、いろんな人とコミュニケーションをとりました。最初は、こちらの話が伝わらなかったり、相手の話を理解できなかったりしたらどうしようと少し不安でした。でも、コミュニケーションの方法はいくつかあるので、不安はすぐに消えました。日本でも、身ぶりや筆談で一生懸命、耳が聞こえない私に伝えようとしてくれる人たちがいます。英語がじゅうぶんに話せなくても、伝えようとする気持ち、理解しようとする気持ちが大切なのだと、この旅で学びました。
千田
大学生のとき、耳の聞こえない友達と2人でスペインに行きました。バルセロナの世界遺産「サグラダ・ファミリア」では、聴覚障害者向けに映像付きのガイドの貸し出しがありました。対応していたのはスペイン手話、カタルーニャ手話、国際手話の3種類。結局、国際手話のものを借りて、この表現はこういうニュアンスかな?と友達と一緒にあれこれ推測しながら聖堂内を見て回りました。外観も内観も圧倒的な迫力で、長居してしまいました。いい思い出です。
◆今月の手話
おしゃべり
手のひらを下にして左右に離した状態から、中央で合わせるように2回内側に向かって手を動かします。
楽しい
両手の指を自分に向け、胸の位置で交互に上下させる。
千田あかり
1997年生まれ、広島県出身。生まれたときから耳が聞こえない。ほかの家族は全員耳が聞こえるが、家の中のコミュニケーションは主に手話。2020年に毎日新聞社に入社。趣味はゲームをすること、読書、イラストを描くことなど。
大垣京佳
1997年生まれ、千葉県出身。生まれたときから耳が聞こえない。家族は耳が聞こえ、家族とのコミュニケーションは筆談、スマホのメモ機能を使っている。2020年に毎日新聞社に入社。趣味はマンガを読むこと、食べること。
【監修】立教大学日本手話講師・佐沢静枝さん
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「あなたらしく」では、さまざまな人を理解し尊重するとともに、自分自身も大切にできるような視点を伝えます。タイトルは、ダウン症のある鈴木俊太朗さんが描きました。