「巡礼の道」広まる魅力 熊野古道、SNS・動画・歩き旅…三重県PR(2024年7月7日『毎日新聞』)

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古びた石畳が続く熊野街道伊勢路三重県尾鷲市で2004年、山口政宣撮影
 「熊野古道」を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が7日、世界遺産に登録されて20周年を迎える。「熊野詣で」などで人々が行き交った「巡礼の道」の認知は広まり、観光に力を入れる三重県も節目を迎えて来訪者をさらに増やすことを目指し、魅力を発信しようとしている。【下村恵美】
 「紀伊山地の霊場と参詣道」は和歌山や奈良にもまたがる。熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の「熊野三山」と「高野山」(いずれも和歌山県)、「吉野・大峯」(奈良県)の各霊場と中辺路、小辺路大辺路伊勢路の熊野参詣道や高野山町石道、大峯奥駈(おくがけ)道で構成される。
 熊野三山への参詣道が「熊野古道」と呼ばれる。県内を通る伊勢路は江戸時代、伊勢神宮を参拝した人々が山道を歩いて西国三十三所の第一番札所「青岸渡寺」(和歌山県那智勝浦町)を目指した道。伊勢市から紀宝町まで10市町をまたぐ約170キロの参詣道には石畳が美しい「馬越(まごせ)峠」や「松本峠」、西国一の難所と言われた「八鬼山超え」などがある。
 かつては年間の観光客が10万人に満たなかったが、2004年に世界遺産に登録されると多くの人が訪れるようになり、10周年だった14年には年間で約42万人が歩いた。県によると、14年をピークに来訪者は増減を繰り返し、コロナ禍を経て23年は約30万人まで回復したいう。
 20周年の今年は約39万人を目標に掲げる県は多くの人に伊勢路へ足を運んでもらおうと、首都圏でのイベント開催のほか、動画やSNS(ネット交流サービス)の活用などに努める。また、実際に歩いて魅力を知ってもらおうと全170キロを14回に分けて歩く「踏破ウオーク」を企画。6月までに8回実施して約半分を踏破した。毎回、定員を超える応募があり、県は集客に手応えを感じている。秋以降は踏破ウオークのほか、山歩きアプリ「YAMAP」を活用したキャンペーンを実施予定で「歩き旅」を推進していくという。
 課題もある。コースの出発点や終着点から最寄り駅までのアクセスや周辺の宿泊施設は十分ではない。県は観光振興基本計画年次報告書で、22年度施策実施状況として東紀州地域の宿泊施設などの充実のほか、実際に歩く観光客にとって危険な場所の早期発見や史跡の保護などに努めたとし、今後も整備に力を入れる。
 7日には熊野古道センター(尾鷲市)で、熊野古道と同じように巡礼の道が世界遺産として登録された「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」があるスペイン・バスク自治州の関係者を招いたシンポジウムを開く。節目の年の機運を高めながら、一見勝之知事は定例会見で「20周年ということで、熊野古道を実際に訪れる方も増えてきているというふうに聞いている。さらに増やしていきたい」と誘客に意欲を示した。
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竹あかりの熊野古道歩く、和歌山 世界遺産登録20年でイベント(2024年7月6日『共同通信』)
 
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世界遺産登録20年を記念し、ライトアップされた「那智の滝」と三重塔の前で空中に浮かべられたLEDランタン=6日夜、和歌山県那智勝浦町
 三重、奈良、和歌山の3県にまたがる世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道」が7日で登録20年を迎えるのを記念し、和歌山県那智勝浦町で6日、熊野古道に竹あかりをともし、参加者が石畳を歩くイベントが開かれた。ライトアップされた那智の滝を背景に、風船を入れた紙製ランタンを夜空に浮かべる催しも行った。
 イベントでは、世界遺産の補陀洛山寺の本尊を特別に開帳し、熊野那智大社青岸渡寺へと続く「大門坂」に置かれた竹あかりが点火。熊野那智大社のご神体「那智の滝」が望める青岸渡寺の三重塔の前では、発光ダイオード(LED)のランタン約100個を空中に浮かべた。