”最側近記者”が明かす「安倍晋三」、その「最後の肉声」と「知られざる顔」(2024年7月7日『現代ビジネス』)

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憲政史上最長の政権を担った安倍晋三元首相が、街頭演説中に銃撃されて帰らぬ人となってから2年。
 
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画像】安倍晋三が恐れ、小池百合子は泣きついた「永田町最後のフィクサー」…!田中角栄
あの歴史的大事件を受けて多くの評伝、証言集などが刊行されてきたが、三回忌を前に、安倍氏に四半世紀にわたって肉薄して取材を続けてきた産経新聞のベテラン政治記者、阿比留瑠比氏が自らの膨大な取材メモをもとに『安倍晋三“最後の肉声” 最側近記者との対話メモ』(産経新聞出版)を上梓した。
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持ち前のユーモアを絶やさない一方、ときに凄まじい怒りをぶちまけるなど、一般からは知り得ない安倍氏の知られざる実像を、同書から一部抜粋・再構成してお届けしよう。

「保守派は裏切りを許さない」

 

自民党支持層に加え、自らを支持する保守派の無党派層は固めて離さないというのが、安倍氏の一貫した政治手法だった。
ここを押えておけば、たとえ内閣支持率政党支持率が低下しても選挙に勝てるが、手放してしまったら苦しくなるという判断だった。
これが長期政権の基本的な戦略だが、今の岸田内閣は様相が異なる。
安倍氏は岸田内閣にちらつくリベラル志向には繰り返し危機感を示していた。
「保守派は裏切りを許さない。私だって、経済政策ではリベラル派的な政策を取ったが、社会思想では変えていない。そこは変えてはダメなんだ」と。
怒りをぶちまけた瞬間
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安倍氏の巨大な業績はあまたあるが、一つだけ言えることがある。
それは、安倍氏自身が失敗したり、挫折したりすることがあっても、やり直せるという再チャレンジを実践してみたせたことだ。
第1次政権後は永田町で「終わった人」と呼ばれ、飛行機や新幹線で同乗した見知らぬ人から面罵されたこともあった。
安倍氏本人が「政治的に一度死んだ」と言ったように、どん底からはいあがり、5年余で再び首相になった姿が人々に希望と励みを与えたことは間違いない。
普段はジョークやユーモアを絶やさないが、筋が通らないことや理不尽なことにはすさまじい怒りをぶちまけたことがある。
例えば、2016年に国連女子差別撤廃委員会が、男系男子による皇位継承を定めた皇室典範の見直しを求めてきたときのことだ。
安倍氏は「ひどい話だ。ある意味、宣戦布告だよ」と言い出し、「国家主権の侵害だ。だったら、ローマ法王についても『何で女性はなれないのか』と勧告しろよという話だ。あいつら絶対にそうは言わない。国連にはそういういやらしさがある」と憤慨してみせた。
政治家としての勝負勘
その一方で、欧米がルールメーカーである現状を冷静に認識しながら、こつこつと匍匐前進で状況を変えたり、大胆に異を唱えたりした。
そこには政治家としての確かな勝負勘のようなものがあった。
そんな安倍氏亡き今、メモに書きとめておいた生前の肉声の一部によって、安倍氏の人となりや考え方の一端なりとも伝えることが出来たら、望外の幸せである。
 
【著者略歴】
阿比留瑠比(あびる・るい) 1966年生まれ、福岡県出身。早大卒業後、90年に産経新聞社入社。98年から政治部に配属。安倍氏取材は四半世紀に及ぶ。
 

安倍晋三〝最後の肉声〟 最側近記者との対話メモ
阿比留瑠比 著
 
定価 1650円(本体1500円+税)
判型 四六判
ページ数 220P
ISBN 978-4-8191-1437-0「公式語録」では知り得ない取材内容を一挙公開
内容紹介
電話、会食の場で漏らした大宰相の本音
「公式語録」では知り得ない取材内容を一挙公開。
雑誌「正論」連載を書籍化
2022年7月8日。安倍晋三元首相が選挙演説中に凶弾に倒れたあの日から間もなく2年となる。
その三回忌を前に、四半世紀にわたり安倍氏を取材し続け、最側近記者として知られる産経新聞論説委員の阿比留瑠比氏が、電話や二人だけの会食の場で大宰相が漏らした言葉を書き留めたメモを一挙に公開。
「公式語録」では決して知り得ない本音と実像に迫る。
「腰抜け」自民党は安倍の気迫を思い出せ!
安倍晋三は、理不尽なことには徹底して戦う政治家だった。
例えば、2016年に国連女子差別撤廃委員会が、男系男子による皇位継承を定めた皇室典範の見直しを求めた際、
筆者に凄まじい怒りをぶちまけた。
「ある意味、宣戦布告だよ。(中略)ローマ法王についても『なんで女性はなれないのか』と勧告しろよという話だ」。
こんな言葉には、安倍が「腰抜け」と呼んだ「自民党」に今最も欠けている気迫が満ち溢れている。