奈緒主演で映画化!性被害をテーマに描いた問題作『先生の白い嘘』が生まれたワケ(2024年7月6日『現代ビジネス』)

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(c)鳥飼茜『先生の白い嘘』/講談社
俳優の奈緒さん主演で映画化を果たした、鳥飼茜さん原作の漫画『先生の白い嘘』(モーニング/講談社 7月5日より全国劇場&3面ライブスクリーンにてロードショー)。
【漫画を読む】性被害、性の格差を真正面から描いた、鳥飼茜さん原作『先生の白い嘘』
男と女の間に横たわる「性の不平等」や「自らの性に対する矛盾した感情」など、多くの人が目を背けていたことに正面から切り込んだ、センセーショナルな作品である本作、一体どのようなきっかけで生まれたのだろうか。著者の鳥飼さんにアンケート取材という形でお話を伺った。試し読みとともにお届けする。
マンガ/鳥飼茜 文/FRaU編集部
「これを実写化するのか……」の声も
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(c)鳥飼茜『先生の白い嘘』/講談社
▼あらすじ
「人間を 2つに分けたとして 必ず どちらかが少しだけ取り分が多い と 私は感じている」
主人公は、24歳の高校教師・原美鈴。
生徒を教師の高みから観察する平穏な毎日を送っていた。そんなある日、
「遅刻する人間と 時間どおり来てる人間 私はいつも少し取り分がすくない方にいる」
美鈴との約束の待ち合わせ時間に「10分遅れる」とメールしておいて、結局25分も遅刻して到着した友人・美奈子。
「待った~~!? ゴメーン 電車一本逃しちゃってぇー」
そう語る美奈子の背後には、美奈子の婚約者・早藤の姿が。
突然の早藤の登場により、動揺する美鈴。
2人の間に、いったい何があったのか――。
そんな中、美鈴が担任するクラスでは、1人の男子生徒・新妻に“人妻との不倫の噂”が立つように。そこで他の教員から、「当該生徒に事実否認してもらっておいた方が一応ね…無難かと」「とにかく!『知りません』『やってません』の一言が出たらそれでいーから! 形だけ! ねっ?」と、担任として放課後にお話を聞くよう促された美鈴。
「先生達は全っ然疑ってないのよ!? むしろ新妻君みたいなマジメな子に限ってそんな話あり得ないって」そう語る美鈴に対して、新妻は
「本当です それ」
と伝え、さらに美鈴に衝撃を与える実体験を語りだす。それは、美鈴自身の“痛ましい経験”を思い起こさせるものだった――。
SNS上では「えげつなくメンタルに迫ってくるグロテスクさが怖すぎた。ほんと凄い漫画だ」「こんなにも人って、男女って、女って、弱くて脆くて面倒臭くて....心がぐつぐつした」「これを実写化するのか……」といった読者の声が飛び交っている本作、どのような想いがきっかけで生まれた作品なのだろうか。
本作が生まれた背景や制作過程でのエピソードなどについて、著者の鳥飼さんにアンケート取材にてお話を伺った。
――『性被害』をテーマに、本作を描こうと思ったきっかけや背景を教えてください。
子供の頃から、女が世間からどう見られるべきか、アニメから映画から大人たちから定義づけられている気がした。見られる性であり値付けされる性であることに違和感があった。性的な搾取や、無理やりのセックスがある事を知り、この強烈な暴力は特別な人だけが遭うレアケースの不幸ではなく、私たちの日常とまったくの地続きであると感じた。こういう事を常々人と語りたかったけど、現実に語りあうより漫画にする方が早いと思って。
――本作を描くにあたって、担当編集の方々とはどのような話をしながらストーリーをまとめたり、ご執筆を進められたのでしょうか?
立ち上げた時の編集者とはかなり込み入った話をぶつけ合った記憶があります。男性だったので、私が漫画を作るうちに湧き起こる、男性への不信、悔しかった思いなども多くぶつけてしまったが、1人の男性として全て受け止め、彼なりに理解したり反論したりしてくれたように思う。その時の会話が、男性読者に対しても、できる限りフェアな態度でこの漫画を描く礎になったと思います。
――作中で「生きてるだけでこんな目に遭う 私が女のせいで 女が女というせいで」という言葉が出てきますが、鳥飼さんご自身が日常生活を送る中で、また多くのニュースなどに触れる中で、同じ言葉を強く思い浮かべたくなるような場面があるとするならばそれはどんな時でしょうか? またそれは本作にどのように影響を与えたのでしょうか?
例えば痴漢や、下着泥棒被害など軽いとされる性被害でも本人の人生には大変な影を落とします。なぜなら、男子と同じように尊厳を持って生きてきた私たちをその事件は「被害者」に変えてしまうから。弱く憐れむべき対象となってしまった自分には一体どんな落ち度があったというのか、何か失言や失礼をしたのか、考えても出てくる答えはひとつ、女という性で生まれたから、ただそれだけのことなのです。これ以上の不条理はありません。
――本作を通じて読者に届いてほしいメッセージや、伝えたい想いなどがあればぜひ教えてください。
まず書きたかったことは、性欲の問題に終始されがちなレイプ事件は、弱い者への暴力そのものであると私は考えているということです。だれかの性欲を「かき立てたから」といって責任は無く、性欲を「感じさせないから」といって無関係でいられない。そういった評価と疎外を巧妙に利用した卑怯な暴力であると思います。そして暴力全般に関しては男女問わず、カップル間、親子間、雇用者間いずれにおいても「力を持つもの」は自戒すべきだと思っています。
今回の映画化を機に、改めて本作を手に取ってみてはいかがでしょうか。
また、7月4日(木)発売のモーニング31号では、鳥飼さんのモーニング初連載『バッドベイビーは泣かない』がスタート! こちらは、7年ぶりに再会した厄介な大人4人のサスペンスラブコメディ。ぜひあわせてチェックを!
鳥飼 茜、FRaU マンガ部
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