刊行物『放送研究と調査』2024年7月号 掲載
5月11日に初回放送の土曜ドラマ『パーセント』(NHK総合・全4回)では,出演者の約3割にあたる,10人以上の障害のある俳優がキャスティングされた。
架空のテレビ局を舞台に,ドラマ班の新人女性プロデューサーが,「障害のある俳優を起用する」という局の方針に葛藤しながらも成長していく物語。俳優を目指す車椅子の高校生役を,東京2020パラリンピックの開会式で「片翼の小さな飛行機」を演じた和合由依さんが務めた。
オーディションは「障害や病気を有する方」を条件とした。身体・知的・視覚・聴覚障害のほか,発達障害や精神障害などがある100人以上が応募し,番組側は1人1人と面談。脚本は,選ばれた俳優の特性にあわせ,劇作家の大池容子さんとスタッフが練り上げ,当て書きした。
企画を立ち上げたNHK大阪放送局の南野彩子プロデューサーは入局7年目。福祉番組班で,障害者情報バラエティー番組『バリバラ』のディレクターなどを経てドラマ班に移り,今回のドラマが初プロデュース作品となる。
NHKでは,難聴者やろう者などの20人が出演した『デフ・ヴォイス法廷の手話通訳士』(2023年)のほか,『家族だから愛したんじゃなくて,愛したのが家族だった』(同年)では,ダウン症の俳優が主人公の弟役を演じるなど,当事者を起用したドラマ制作が続いている。
南野プロデューサーは「当事者の皆さんと撮影を進めるなかで,制作スタッフも多くを学ぶ現場だった。これからも障害の有無や性別,属性で価値を判断されない社会になることを願ってドラマを作りたい」と話す。
【あらすじ】
ローカルテレビ局「Pテレ」のバラエティ班で、多忙な日々を送る吉澤未来(よしざわみく・伊藤万理華)。彼女はいつかドラマ班に異動したいと、企画書を出し続けていた。ある日、編成部長に呼び出され、自身のドラマの企画が通ったことを告げられる。喜んだのもつかの間、部長は「この企画の主人公、障害者ってことにできへんか?」と未来に尋ねた。局をあげた「多様性月間」というキャンペーンの一貫として、登場人物に多様性を持たせたドラマが必要なのだと言う。戸惑う未来をよそに、「障害のある俳優を起用する」という条件で企画は進んでいく。悩みながらも、とにかく企画を成立させねばと取材を進める未来。やがて彼女は車椅子に乗った高校生・宮島ハル(みやじまはる・和合由依)と出会う。俳優を目指すハルに未来は不思議な魅力を感じ、ドラマの出演をオファーをするが、ハルは「障害を利用されるんは嫌や」と拒否。諦めきれない未来は、ハルが所属する劇団「S」の稽古場を訪ねるが……。
【放送予定】 総合 2024年5月11日(土)よる10時~ 放送開始<全4回>
BSP4K 毎週土曜日 午前9時25分~
[再放送]総合 翌週水曜日 午前0時35分~
【作】大池容子
【音楽】池永正二
【主題歌】インナージャーニー「きらめき」
【出演】伊藤万理華 和合由依
/ 岡山天音 菊池亜希子
【制作統括】櫻井賢 安達もじり
【プロデューサー】南野彩子 葛西勇也
【演出】大嶋慧介 押田友太