日銀が国債の購入を減らす方針を固め、政府は国債発行の手法を見直す必要に迫られている。課題は日銀に代わる買い手の確保だ。財務省の有識者研究会は民間銀行の需要を踏まえ、発行する国債の年限を短くする方向性を示した。第一歩として評価できる。
日銀と歩調を合わせつつ市場と対話し、精緻に国債発行の計画を練ってほしい。財政の信認を確保するため、発行そのものを抑える努力も忘れてはならない。
日銀は11年続いた異次元の金融緩和で長期国債を大量に買い続け、発行残高の半分を保有する。3月に緩和を解除し、6月の金融政策決定会合で購入額を現行の月6兆円前後から減らす方針を確認した。7月末の次回会合で今後1〜2年の削減計画を決める。
市場の動揺を防ぐため、財務省には日銀に代わる安定的な買い手をみつける努力を求めたい。
研究会は報告で民間銀行の需要を想定して「発行年限の短期化」を掲げ、償還までの期間が2〜5年といった国債を重点的に発行する方針を示唆した。こうした国債は金利変動のリスクが小さい。金融規制が厳しくなるなかでも銀行の買い意欲は強いと判断した。
国債の年限が短いと頻繁に借り換える必要がある。だが年限を延ばそうにも、償還までの期間が長い国債の買い手である生命保険会社には購入意欲に陰りもみえる。個人や海外勢を含めて需要をきめ細かく把握し、投資家層の多様化にもつなげてほしい。
状況は異なるが、金融政策の移行期にある日本も財政運営や国債管理には細心の注意が必要だ。円相場は28日に一時1ドル=161円台と1986年末以来の記録的な安値をつけた。この動きを「日本売り」に転じさせてはならない。