鹿児島県警の「闇」 隠ぺいの背景に“不倫”、セクハラ、パワハラ…5年間で増えた不祥事(2024年6月11日『AERA dot.』)

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身内の犯罪を隠蔽したと告発された鹿児島県警の野川明輝本部長。報道陣の取材に応じる=2024年6月6日、鹿児島県警本部
 鹿児島県警の前生活安全部長が警察の内部文書を漏えいしたとして、国家公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで逮捕された事件は、鹿児島県警の隠蔽体質を露呈するものとなった。そもそも事件の発端は、鹿児島県警の不祥事の多さにある。県警に情報開示請求したところ、この組織の不祥事の件数は、ここ数年で大幅に増えている。
 事件は、鹿児島県警所属の警察官の不祥事を隠蔽(いんぺい)する本部長の姿勢に義憤を覚えたという本田尚志・前生活安全部長(60)が、県警の不祥事などをまとめた資料を、ウェブメディアなどで県警を追及していたジャーナリストの男性に提供したことが「守秘義務違反」に問われたという構図だ。
 本田前生安部長は、
「鹿児島県警職員が行った犯罪行為を、野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことが、どうしても許せなかったから」
 と主張している。
■増えた「不適切交際」
 筆者は昨年12月、鹿児島県警に、2019年1月1日から23年12月1日までの同県警所属警察官の処分記録の開示請求をした。その結果、その5年間でハラスメントの処分件数が5倍以上に増えていることがわかった。
 19年と20年に2件だったセクハラは、22年には4件、23年には8件に。19年に0件だったパワハラも、23年には5件に増加。奇遇にも野川本部長が鹿児島県警に着任した22年から、ハラスメントの処分数が急速に増えている。
 不倫も5年間で増加傾向にある。
 警察内部には、「不適切交際」と呼ばれる処分の種類がある。
「文字通り、不適切な交際を指す言葉で、基本的には不倫を指します。いわゆる反社との交際などは、不適切交際として処分されることはあまりなく、より重い処分が下されるため、不適切交際と聞けば不倫と判断するのが一般的です」(大手紙記者)
 19年に4件だった不適切交際の件数は22年にはその倍の8件を記録している。
 警察官の不倫は珍しいことではない。22年7月には、愛媛県警の警察官が勤務中に交番で性行為をして処分されている例があるほか、今年4月にも、兵庫県警の警察官が交番内で性行為をして処分されている。鹿児島県警の警察官については詳細は定かではないが、同日に、同じ理由で処分されている警察官がいる。
 処分台帳によると、処分を受けているのは鹿児島県警所属の巡査長と巡査。2人の処分理由はいずれも「令和3年5月頃から令和4年5月10日頃までの間、知人と不適切な交際をしたもの」だった。
13歳未満の少女に対する強制性交の疑い
 それ以外にも、職員数わずか3400人あまりの鹿児島県警での不祥事は目立つ。21年7月には、県警所属の巡査が傷害で処分を受けている。さらに、22年8月には、同僚に嫌がらせをしたとして、県警所属の巡査部長と巡査長がそれぞれ、処分を受けている。
 児童に対する性加害も目立つ。19年12月に児童買春をしたとして、県警所属の巡査部長が、20年3月19日付けで懲戒免職処分を受けているほか、昨年10月19日には、SNSで知り合った当時13歳未満の少女と性交したとして、強制性交の疑いで県警本部の巡査長が逮捕されている(23年11月30日付けで懲戒免職処分)。
 同事件を巡っては、当時現職警官が逮捕されているという重大な事案であるにもかかわらず、鹿児島県警は記者会見を開かなかった。地元紙の報道によれば、県警記者クラブに加盟するテレビや新聞約10社が会見を開くよう求めたが、応じなかったという。
 今年に入ってからも、県警の警部が不同意わいせつの疑いで逮捕されたほか、盗撮の疑いで巡査部長が逮捕されている。逮捕されている前生活安全部長が言う県警の「闇」が暴かれるときは来るのだろうか。
(田代秀都)