55年ぶりの万博開催まで1年を切った大阪。東京に次ぐ“ニッポン第二の経済圏”の中心地で今、何が起きているのか──。かつて読売新聞大阪本社の社会部記者として数々のスクープを放ったジャーナリストの大谷昭宏氏は、在阪メディアのあり方に危機感を抱いている。
細胞と水がひとつになったことで生まれた「ミャクミャク」
「4月に小林製薬の紅麹問題で読売大阪本社の社会部記者が取材先コメントを捏造した件では、『(小林製薬を)懲らしめてやる』という意識が垣間見えた。メディアが自らを“権力側の人間”だと勘違いしているのではないでしょうか。そう思わせる出来事がとりわけ在阪メディアで目立ちます」
「私が話を聞いたMBS社員は『外から言われるまで気が付かなかった』と言っていました。権力を監視する役割を担う自覚がない証拠です」
一方で歴史を振り返ると、大阪にはたしかな“批判精神”が根付いていたはずだという。
「『天下の台所』と言われた江戸時代、大阪の人口の大半は町人でした。大阪商人は権力者たる武士に対して、『稼げんくせに威張る』『困るとカネ借りにくる』とまで言える在野の批判精神があった。
しかし、東京一極集中の流れのなか、商人の街・大阪の企業力は失われ、自ら稼げなくなりました。結果、“政治頼み”がメディアを含む企業に浸透してしまったんです。維新批判はタブー視され、ヨイショばかりの風潮が大阪に蔓延っています」
大谷氏は、「大阪人に、しぶといポテンシャルが残っていることはたしか」とも言う。
「メディアが健全な批判精神を取り戻すことが、“政治に頼らない大阪”をもう一度構築する第一歩になるはずです」
※週刊ポスト2024年6月21日号