雪崩死で教諭らに実刑 部活動の安全に重い教訓(2024年6月6日『毎日新聞』-「社説」)

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判決後に記者会見する遺族たち=宇都宮市の栃木県庁で2024年5月30日午後4時50分、有田浩子撮影
 自然の中での活動にはリスクが伴う。学校の指導者たちに、安全最優先の姿勢を強く求めた司法判断である。
 栃木県那須町で2017年3月、高校生ら8人が雪崩に巻き込まれて死亡した事故で、引率した教諭ら3人に禁錮2年の実刑判決を宇都宮地裁が言い渡した。
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登山講習会に参加していた高校生らが雪崩に巻き込まれた現場付近=栃木県那須町で2017年3月27日午後4時25分、本社ヘリから長谷川直亮撮影
 県高校体育連盟が主催する登山講習会に、県内の高校の山岳部員らが参加していた。雪上歩行訓練をしている際に雪崩に遭い、負傷者も40人に上った。訓練の実施を決めた3人が業務上過失致死傷罪に問われた。
 現場は樹木がまばらな急斜面で、前日から大量の雪が降っていた。大雪や雪崩の注意報が出ていたことも踏まえ、判決は「雪崩の発生を予見できた」と指摘した。
 危険を避ける措置を取らなかったのは緊張感を欠いていたと批判し、「相当に重い不注意による人災だった」と結論づけた。
 3人は登山や指導の経験が豊富で、県高体連の登山部門の主要メンバーだった。いずれも無罪を主張していたが、軽率な判断と言わざるを得ない。
 指導者に細心の注意が求められる学校活動の一環で、多数の被害者が出たことから、厳しい判決となった。
 ただ、引率者の責任を追及するだけでは、再発防止にはつながらないだろう。
 事故の7年前にも講習会の参加者が雪崩に遭った。けが人が出なかったこともあり、県高体連などで情報が共有されていなかった。
 講習会が約60年続く中で「慣れ」が生まれ、危機管理意識が欠けていたと指摘されている。
 県教育委員会は、学校の部活動などの登山計画を専門家らが審査する仕組みを設けていたが、講習会は対象外だった。
 組織的に安全対策を講じる体制の整備が求められる。
 冬山は雪崩や吹雪に遭う恐れがあり、滑落や体温低下など命に関わる危険と隣り合わせだ。
 一方で、大自然と向き合い、日常生活では得がたい経験を重ね、知識を身につける場でもある。
 学校関係者は重い教訓として受け止めるべきだ。悲劇を繰り返さないよう、安全確保の取り組みを徹底しなければならない。