旧岩淵水門が「重要文化財」指定へ 荒川と隅田川の分岐点で水害防ぎ100年 「誇りだ」住民ら喜び(2024年5月18日『東京新聞』)

 文化審議会は17日、8件の建造物を重要文化財に指定するよう文部科学相に答申した。このうち東京都内の建造物は、葛飾区の東京拘置所内にある旧小菅刑務所庁舎と、北区の旧岩淵水門の2件。荒川と隅田川の分岐点に設けられ、住民の暮らしを水害から守り続けた旧岩淵水門は「赤水門」と呼ばれる地域のシンボル。住民たちは「誇りに思う」と喜んだ。
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重要文化財に指定される旧岩淵水門=15日、東京都北区で、本社ヘリ「あさづる」から
 午後5時、水門近くの遊歩道で山田加奈子区長が答申を伝えると、集まった住民ら約70人から拍手や歓声が湧いた。地元の岩淵町自治会の石渡良憲会長(76)は「毎日のように眺めている赤水門の偉大さを改めて感じ、すごく誇りに思う」と喜んだ。
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旧岩淵水門の前で重要文化財指定に喜ぶ住民ら
 骨組みに鉄筋コンクリートを使った先駆的な水門は、1924(大正13)年完成。全長約62メートルの本体に5門の鋼製引上扉(ひきあげとびら)を備え、両脇に袖壁が取り付けられている。現岩淵水門(青水門)が82年に完成したことに伴い、役目を終えた。近代化産業遺産として保存され、映画やドラマのロケにも活用されている。
 山田区長は「荒川放水路の通水100年の節目に、価値が認められてうれしい。赤水門の偉業を地域に伝えて守るとともに、観光面の魅力も広げたい」と話した。都内では葛飾区の旧小菅刑務所庁舎の指定も答申された。(押川恵理子)
 

旧岩淵水門(赤水門) きゅういわぶちすいもん(あかすいもん)北区ホームページ
解説
かつて「荒(あら)ぶる川」という名のとおり氾濫を繰り返した荒川。旧岩淵水門はその要として、大正5年から8年間の歳月をかけて建設されました。工事を監督したのはパナマ運河建設に携わった青山士(あおやまあきら)です。以来、荒川下流域にすむ人々の暮らしを洪水から守ってきました。
昭和30年代の改修工事で赤い色に塗りかえられたことから「赤水門」という愛称で地元の人々に親しまれているこの水門は現在は、水門としての役目を終え、下流にある青い岩淵水門が役割を果たしています。 旧岩淵水門は歴史的建造物として東京都より選定されています。
旧岩淵水門のすぐ横に架かる橋から、水門を間近で見ることができます。
そして、この橋を渡りきったところにあるのが「荒川赤水門緑地」。 小さなスペースですが、ここから眺める荒川上流の景色は川縁から見るものとはまた違った趣があります。
緑地には荒川リバーアートコンテスト特賞を受賞した、青野正さん作の『月を射る』というオブジェがあります。流れる河を背景に「形あるものの消えゆく時間」を考えさせられる空間です。
また、この中州の木立のなかに「草刈の碑」があります。昭和13年8月から行われた「全日本草刈選手権」を記念したものです。選手権自体は戦争によって中止されてしまいました。
所在地 志茂5ー42ー6付近
連絡先 国土交通省 荒川下流河川事務所 岩淵出張所
03-3901-4240