公害の被害者に寄り添うべき官庁として、あるまじき行為だ。水俣病関係者らが伊藤信太郎環境相に意見を述べた際、環境省職員が途中でマイクを遮断した問題は、公害被害者らの信頼を大きく損なった。国の姿勢自体が疑われる。
水俣病の公式確認から68年の5月1日、患者・被害者8団体が熊本県水俣市で伊藤環境相と懇談し、順番に意見を発表した。その際、環境省の担当者が3分間の持ち時間を超過した参加者の話を制止後、マイクの音を切った。
マイクを取り上げる場面さえあり、懇談会の終了時、団体側から「なぜしゃべらせなかったのか」と抗議の声が出たのは当然だ。司会者から明確な説明もないまま、怒号の中で閉会する後味の悪さだった。
懇談の時間管理のためか、以前から「3分間ルール」はあったようだ。ただ、実際にマイクを遮断したのは今回が初めてという。環境相の帰りの予定があったためというが、当の環境相は懇談会の出席前、「水俣病は環境問題の原点だ。地域の声をしっかり拝聴したい」と述べていたのだから、ほとんど笑話じみている。
環境相自身がせめてその場で遮断を押しとどめるべきだった。1週間後になってやっと現地を再訪し「心からおわびし、深く反省する」と謝罪したが、遅きに失したというほかない。